Thursday, September 7, 2023

Spring BootとMySQLによる実践的全文検索の実装

現代のアプリケーションにおいて、ユーザーが必要な情報を迅速かつ的確に見つけ出せる検索機能は、もはや不可欠な要素です。ECサイトの商品検索、ブログの記事検索、社内ドキュメントの横断検索など、その用途は多岐にわたります。このような要求に応える技術が「全文検索」です。単純な `LIKE` 句による文字列マッチングとは異なり、全文検索は言語的な特性を考慮し、より自然で精度の高い検索結果を提供します。本稿では、多くの開発現場で採用されているJavaフレームワークであるSpring Bootと、リレーショナルデータベースのデファクトスタンダードであるMySQLを組み合わせ、堅牢かつ高性能な全文検索機能を実装するプロセスを、基礎から応用まで詳細に解説していきます。

ElasticsearchやOpenSearchのような専用の検索エンジンを導入することも一つの選択肢ですが、プロジェクトの規模や要件によっては、既存のMySQLデータベースの機能を最大限に活用する方が、インフラの複雑化を避け、開発コストを抑制する上で合理的である場合があります。MySQLの全文検索機能は、特にバージョン5.7以降でInnoDBエンジンがN-gramパーサーをサポートしたことにより、日本語のような分かち書きのない言語にも対応可能となり、その実用性が飛躍的に向上しました。この記事を通じて、MySQL全文検索のポテンシャルを最大限に引き出し、Spring Bootアプリケーションにシームレスに統合するための知識とテクニックを習得しましょう。

MySQL全文検索の深層:基礎理論と日本語対応

Spring Bootでの実装に入る前に、土台となるMySQLの全文検索機能そのものについて深く理解することが重要です。その仕組み、特性、そして日本語を扱う上での特有の課題と解決策を掘り下げていきましょう。

FULLTEXTインデックス:検索を支える心臓部

リレーショナルデータベースにおいて、インデックスはデータ検索を高速化するための重要な仕組みです。通常、`B-TREE`インデックスが主キーや検索条件として頻繁に使用されるカラムに設定されますが、これは完全一致や前方一致、範囲検索には強いものの、文章の中から特定の単語を探し出すような「中間一致」や「複数キーワード」での検索には適していません。`LIKE '%keyword%'` のようなクエリがテーブルフルスキャンを引き起こし、パフォーマンスを著しく低下させるのはこのためです。

一方、`FULLTEXT`インデックスは、テキストデータを「単語(トークン)」の集合として扱います。インデックス作成時に、対象となるカラムのテキストデータがパーサーによって単語に分割され、どの単語がどのドキュメント(行)に、どの位置に出現するかの情報(転置インデックス)が構築されます。これにより、検索時にはこのインデックスを利用して、特定の単語を含むドキュメントを極めて高速に特定できるのです。

対象ストレージエンジン: かつて、MySQLの全文検索機能は`MyISAM`ストレージエンジンでしか利用できませんでした。しかし、`MyISAM`はトランザクションをサポートしないなど、現代的なアプリケーション開発においては多くの制約がありました。MySQL 5.6以降、標準のトランザクション対応ストレージエンジンである`InnoDB`が全文検索をサポートしたことで、その実用性は大きく向上しました。本稿でも、`InnoDB`を前提として解説を進めます。

日本語検索の壁と「N-gramパーサー」

MySQLのデフォルトの全文検索パーサーは、スペースや句読点を区切り文字として単語を分割します。これは英語のように単語間がスペースで区切られている言語ではうまく機能しますが、日本語のように単語が連続して記述される言語(分かち書きのない言語)では、文を正しく単語に分割できません。例えば、「東京都の天気」というテキストは、デフォルトパーサーでは一つの単語として扱われてしまい、「東京」や「天気」で検索してもヒットしなくなります。

この課題を解決するのがN-gramパーサーです。N-gramは、テキストを指定した文字数(N)で機械的に分割していく手法です。例えば、N=2(バイグラム)の場合、「東京都の天気」は以下のように分割されます。

  • 東​京
  • 京​都
  • 都​の
  • の​天
  • 天​気

このようにテキストを細かく分割してインデックス化することで、「東京」や「京都」といった部分的な文字列での検索が可能になります。MySQL 5.7.6以降、`InnoDB`でこのN-gramパーサーがビルトインで提供されており、日本語の全文検索を実用的なレベルで実現できるようになりました。

N-gramパーサーを有効にするには、`FULLTEXT`インデックス作成時に `WITH PARSER ngram` を指定します。また、`ngram_token_size`というシステム変数で、分割する文字数(N)をグローバルに設定できます(デフォルトは2)。

3つの検索モードを使いこなす

MySQLの全文検索では、`MATCH(column) AGAINST(keyword [IN ... MODE])` という構文を使用します。この `[IN ... MODE]` の部分で、検索の振る舞いを制御する3つのモードを選択できます。

  1. IN NATURAL LANGUAGE MODE(自然言語モード): デフォルトのモードです。検索キーワードをスペース区切りの単語として解釈し、それらの単語を含むドキュメントを検索します。内部的に関連度(レリバンシー)スコアが計算され、より多くのキーワードを含む、またはキーワードの出現頻度が高いドキュメントが上位に来る傾向があります。
  2. IN BOOLEAN MODE(ブーリアンモード): 最も強力で柔軟なモードです。特殊な演算子を使って、より複雑な検索条件を指定できます。
    • `+`: その単語が必須であることを示す。(例: `+Spring -Java` → Springを含み、Javaを含まない)
    • `-`: その単語を含まないことを示す。
    • `>`: その単語を含むドキュメントの関連度スコアを上げる
    • `<`: その単語を含むドキュメントの関連度スコアを下げる
    • `*`: ワイルドカード。単語の末尾に付けることで前方一致検索を行う。(例: `tech*` → technology, technicalなどにヒット)
    • `"`: フレーズ検索。ダブルクォーテーションで囲まれた語句が、その通りの順番で出現するドキュメントを検索する。(例: `"Spring Boot"`)
  3. WITH QUERY EXPANSION(クエリ拡張モード): 2段階の検索を行います。まず、指定されたキーワードで一度検索を実行します。次に、その結果から関連性の高い単語を自動的に抽出し、それらの単語を元のキーワードに加えて再度検索を実行します。これにより、ユーザーが意図しているであろう関連キーワードまで含めて検索範囲を広げることができます。例えば「データベース」で検索した場合、最初の検索結果に「MySQL」や「PostgreSQL」が多く含まれていれば、それらの単語も検索対象に加える、といった挙動をします。

これらのモードを適切に使い分けることで、アプリケーションの要件に応じた多様な検索機能を提供できます。

Spring Bootプロジェクトの構築

理論を学んだところで、いよいよ実践に移ります。まずは、全文検索機能を実装するためのSpring Bootプロジェクトを準備しましょう。

1. プロジェクトの初期化

Spring Initializr を利用して、プロジェクトの雛形を生成するのが最も簡単です。以下の設定でプロジェクトを作成します。

  • Project: Maven Project
  • Language: Java
  • Spring Boot: 最新の安定バージョン(例: 2.7.x or 3.x.x)
  • Group: com.example (任意)
  • Artifact: mysql-fulltext-search (任意)
  • Packaging: Jar
  • Java: 17 or 11

次に、必要な依存関係を追加します。

  • Spring Web: REST APIを構築するために必要です。
  • Spring Data JPA: データベースアクセスを抽象化し、リポジトリパターンを容易に実装できます。
  • MySQL Driver: MySQLデータベースに接続するためのJDBCドライバです。
  • Lombok (任意): ボイラープレートコード(ゲッター、セッターなど)を削減し、コードを簡潔に保つために便利です。

設定が完了したら、「GENERATE」ボタンをクリックしてプロジェクトをダウンロードし、お好みのIDE(IntelliJ IDEA, Eclipseなど)で開きます。

2. データベース接続設定

次に、`src/main/resources/application.properties`(または `application.yml`)ファイルに、Spring BootがMySQLデータベースに接続するための情報を記述します。

# application.properties

# === DataSource Settings ===
# データベースのURL。your_databaseの部分は実際に使用するデータベース名に置き換えてください。
# useSSL=false: SSL接続を無効化(ローカル開発用)
# serverTimezone=UTC: タイムゾーンをUTCに設定
# allowPublicKeyRetrieval=true: MySQL 8以降で必要な場合がある設定
spring.datasource.url=jdbc:mysql://localhost:3306/your_database?useSSL=false&serverTimezone=UTC&allowPublicKeyRetrieval=true

# データベースのユーザー名とパスワード
spring.datasource.username=your_username
spring.datasource.password=your_password

# 使用するJDBCドライバのクラス名
spring.datasource.driver-class-name=com.mysql.cj.jdbc.Driver

# === JPA/Hibernate Settings ===
# 起動時にエンティティを基にDDL(Data Definition Language)を自動実行する設定
# create: 毎回テーブルを削除して再作成
# create-drop: 終了時にテーブルを削除
# update: 既存のスキーマとの差分を更新(開発中に便利だが、本番環境での使用は非推奨)
# validate: エンティティとスキーマの整合性を検証
# none: 何も行わない(本番環境での推奨設定)
spring.jpa.hibernate.ddl-auto=update

# 実行されるSQLをコンソールに表示する
spring.jpa.show-sql=true

# コンソールに表示するSQLを整形する
spring.jpa.properties.hibernate.format_sql=true

# 使用するMySQLのバージョンに合わせた方言(Dialect)を指定
# これにより、HibernateがMySQL特有のSQLを正しく生成できるようになる
spring.jpa.database-platform=org.hibernate.dialect.MySQL8Dialect

これらの設定により、Spring Bootアプリケーションは起動時に指定されたMySQLデータベースへの接続を確立します。

データモデルと永続化層の実装

アプリケーションの核となるデータ構造を定義し、データベースと連携させる層を構築します。

1. テーブル定義とFULLTEXTインデックス

まず、検索対象となるデータを格納するテーブルをMySQLで作成します。今回はブログ記事を想定した `articles` テーブルを作成します。重要なのは、全文検索の対象としたいカラム(`title` と `content`)に対して、N-gramパーサーを指定した `FULLTEXT` インデックスを付与することです。

-- MySQL サーバー側で N-gram の文字数を設定 (必要に応じて)
-- SET GLOBAL ngram_token_size=2;

CREATE TABLE articles (
    id BIGINT UNSIGNED AUTO_INCREMENT PRIMARY KEY,
    title VARCHAR(255) NOT NULL,
    content TEXT NOT NULL,
    created_at TIMESTAMP NOT NULL DEFAULT CURRENT_TIMESTAMP,
    updated_at TIMESTAMP NOT NULL DEFAULT CURRENT_TIMESTAMP ON UPDATE CURRENT_TIMESTAMP,
    -- titleとcontentカラムを対象に、N-gramパーサーを使用したFULLTEXTインデックスを作成
    FULLTEXT INDEX ft_index_title_content (title, content) WITH PARSER ngram
) ENGINE=InnoDB CHARACTER SET utf8mb4 COLLATE utf8mb4_unicode_ci;

このDDLのポイントは `FULLTEXT INDEX ft_index_title_content (title, content) WITH PARSER ngram` の部分です。これにより、`title`と`content`の両方のカラムにまたがる日本語対応の全文検索インデックスが作成されます。

2. JPAエンティティの作成

次に、作成した `articles` テーブルに対応するJPAエンティティクラスをJavaで定義します。

import lombok.Getter;
import lombok.NoArgsConstructor;
import lombok.Setter;
import javax.persistence.*;
import java.time.LocalDateTime;

@Entity
@Table(name = "articles")
@Getter
@Setter
@NoArgsConstructor // JPA仕様ではデフォルトコンストラクタが必要
public class Article {

    @Id
    @GeneratedValue(strategy = GenerationType.IDENTITY)
    private Long id;

    @Column(nullable = false)
    private String title;

    @Lob // TEXT型など、大きなデータ型に対応
    @Column(nullable = false, columnDefinition = "TEXT")
    private String content;

    // 作成日時と更新日時のフィールドを追加することも一般的
    // @Column(updatable = false, nullable = false)
    // private LocalDateTime createdAt;
    
    // @Column(nullable = false)
    // private LocalDateTime updatedAt;
}

`@Entity`アノテーションがこのクラスをJPAの管理対象エンティティであることを示し、`@Table(name = "articles")`で対応するテーブル名を指定しています。各フィールドがテーブルのカラムに対応します。

3. Spring Data JPAリポジトリの作成

データベースへのアクセス操作(CRUD操作など)を行うインターフェース、リポジトリを作成します。Spring Data JPAの魔法により、インターフェースを定義するだけで、基本的なデータベース操作のメソッドが自動的に実装されます。

そして、ここに全文検索を実行するためのカスタムメソッドを定義します。MySQLの `MATCH ... AGAINST` 構文は標準のJPQL(Java Persistence Query Language)ではサポートされていないため、`nativeQuery = true` を指定して、データベース固有のSQLを直接記述する必要があります。

import org.springframework.data.jpa.repository.JpaRepository;
import org.springframework.data.jpa.repository.Query;
import org.springframework.data.repository.query.Param;
import org.springframework.stereotype.Repository;
import java.util.List;

@Repository
public interface ArticleRepository extends JpaRepository<Article, Long> {

    /**
     * 自然言語モードで全文検索を実行します。
     * @param keyword 検索キーワード
     * @return 検索結果のArticleリスト
     */
    @Query(
        value = "SELECT * FROM articles WHERE MATCH(title, content) AGAINST(:keyword IN NATURAL LANGUAGE MODE)",
        nativeQuery = true
    )
    List<Article> searchByNaturalLanguageMode(@Param("keyword") String keyword);

    /**
     * ブーリアンモードで全文検索を実行します。
     * @param keyword 検索キーワード(ブーリアン演算子を含む)
     * @return 検索結果のArticleリスト
     */
    @Query(
        value = "SELECT * FROM articles WHERE MATCH(title, content) AGAINST(:keyword IN BOOLEAN MODE)",
        nativeQuery = true
    )
    List<Article> searchByBooleanMode(@Param("keyword") String keyword);
}

ここでは、自然言語モードとブーリアンモードの2種類の検索メソッドを定義しました。`@Query`アノテーション内に直接SQLを記述し、`nativeQuery = true` をセットします。メソッドの引数に `@Param("keyword")` を付けることで、SQL文中の `:keyword` プレースホルダに引数の値をバインドできます。これにより、SQLインジェクションのリスクを回避できます。

ビジネスロジックとAPIの構築

永続化層が完成したら、次はそのロジックを呼び出し、外部(Webブラウザや他のサービス)に公開するためのAPIを構築します。ここでは、関心の分離の原則に従い、コントローラー、サービス、DTO(Data Transfer Object)の各層を明確に分けて実装します。

1. DTO(Data Transfer Object)の導入

APIのレスポンスとして、JPAエンティティを直接返却するのは避けるべきです。エンティティはデータベースの構造と密接に結合しており、将来的なエンティティの変更がAPI仕様の変更に直結してしまうためです。また、不要な情報や内部的な情報を外部に漏らしてしまうセキュリティリスクも伴います。そこで、APIの入出力専用のデータ構造であるDTOを導入します。

// ArticleSearchResponse.java
import lombok.AllArgsConstructor;
import lombok.Getter;

@Getter
@AllArgsConstructor // 全てのフィールドを引数に持つコンストラクタを生成
public class ArticleSearchResponse {
    private Long id;
    private String title;
    private String highlightedContent; // ハイライト処理などを施した本文

    // EntityからDTOへの変換用ファクトリメソッド
    public static ArticleSearchResponse from(Article article) {
        // ここでは単純なマッピングだが、実際には本文の要約や
        // 検索キーワードのハイライト処理などを加えることができる
        String summary = article.getContent().length() > 100 
            ? article.getContent().substring(0, 100) + "..." 
            : article.getContent();
        
        return new ArticleSearchResponse(article.getId(), article.getTitle(), summary);
    }
}

2. サービス層の設計

サービス層は、アプリケーションのビジネスロジックを担当します。コントローラーから受け取ったリクエストを解釈し、リポジトリを呼び出してデータを操作し、その結果を加工してコントローラーに返却する役割を担います。

import lombok.RequiredArgsConstructor;
import org.springframework.stereotype.Service;
import org.springframework.transaction.annotation.Transactional;
import java.util.List;
import java.util.stream.Collectors;

@Service
@RequiredArgsConstructor // finalフィールドに対するコンストラクタを自動生成
@Transactional(readOnly = true) // クラス全体に読み取り専用トランザクションを適用
public class ArticleSearchService {

    private final ArticleRepository articleRepository;

    public List<ArticleSearchResponse> searchArticles(String keyword) {
        if (keyword == null || keyword.isBlank()) {
            return List.of(); // or throw new IllegalArgumentException("キーワードは必須です");
        }

        List<Article> articles = articleRepository.searchByNaturalLanguageMode(keyword);

        return articles.stream()
                .map(ArticleSearchResponse::from)
                .collect(Collectors.toList());
    }
    
    // ブーリアンモード用のメソッドも同様に実装可能
    public List<ArticleSearchResponse> searchArticlesWithBooleanMode(String keyword) {
        if (keyword == null || keyword.isBlank()) {
            return List.of();
        }
        
        // ユーザー入力を安全なブーリアンモードクエリに変換する処理をここに加えるのが望ましい
        // 例: 各単語の前に+を付ける
        String booleanKeyword = formatToBooleanQuery(keyword);

        List<Article> articles = articleRepository.searchByBooleanMode(booleanKeyword);

        return articles.stream()
                .map(ArticleSearchResponse::from)
                .collect(Collectors.toList());
    }

    private String formatToBooleanQuery(String keyword) {
        // スペースで区切られた単語の先頭に `+` を付与し、AND検索とする
        return java.util.Arrays.stream(keyword.split("\\s+"))
                .filter(s -> !s.isEmpty())
                .map(s -> "+" + s)
                .collect(Collectors.joining(" "));
    }
}

`@Transactional(readOnly = true)`をクラスレベルで付与することで、このサービス内のメソッドはデフォルトで読み取り専用トランザクション内で実行され、パフォーマンス上のメリットが得られます。

3. RESTコントローラーの実装

最後に、HTTPリクエストを受け付けるエンドポイントとなるコントローラーを実装します。このコントローラーは、リクエストの検証、サービスメソッドの呼び出し、そしてレスポンスの返却に専念します。

import lombok.RequiredArgsConstructor;
import org.springframework.http.ResponseEntity;
import org.springframework.web.bind.annotation.GetMapping;
import org.springframework.web.bind.annotation.RequestMapping;
import org.springframework.web.bind.annotation.RequestParam;
import org.springframework.web.bind.annotation.RestController;
import java.util.List;

@RestController
@RequestMapping("/api/articles")
@RequiredArgsConstructor
public class ArticleController {

    private final ArticleSearchService articleSearchService;

    @GetMapping("/search")
    public ResponseEntity<List<ArticleSearchResponse>> search(@RequestParam("keyword") String keyword) {
        List<ArticleSearchResponse> results = articleSearchService.searchArticles(keyword);
        return ResponseEntity.ok(results);
    }
    
    @GetMapping("/search-boolean")
    public ResponseEntity<List<ArticleSearchResponse>> searchBoolean(@RequestParam("keyword") String keyword) {
        List<ArticleSearchResponse> results = articleSearchService.searchArticlesWithBooleanMode(keyword);
        return ResponseEntity.ok(results);
    }
}

これで、`http://localhost:8080/api/articles/search?keyword=検索したい言葉` のようなURLにGETリクエストを送ることで、全文検索機能を実行できるAPIが完成しました。

全文検索機能の拡張と最適化

基本的な実装は完了しましたが、実用的なアプリケーションを構築するためには、さらにいくつかの高度な機能を組み込むことが望ましいです。

関連度スコアによるソート

全文検索の大きな利点の一つは、各ドキュメントが検索キーワードとどれだけ関連しているかを示す「関連度スコア」を算出できる点です。このスコアが高い順に結果を並べることで、ユーザーはより求めている情報を見つけやすくなります。スコアを取得するには、ネイティブクエリを少し変更します。

// ArticleRepository.java
// スコアも取得するためのカスタムDTOインターフェース
public interface ArticleSearchResult {
    Long getId();
    String getTitle();
    String getContent();
    double getScore();
}

@Query(
    value = "SELECT id, title, content, MATCH(title, content) AGAINST(:keyword IN NATURAL LANGUAGE MODE) as score " +
            "FROM articles WHERE MATCH(title, content) AGAINST(:keyword IN NATURAL LANGUAGE MODE) > 0 " + 
            "ORDER BY score DESC",
    nativeQuery = true
)
List<ArticleSearchResult> searchAndSortByRelevance(@Param("keyword") String keyword);

このクエリでは、`MATCH ... AGAINST` の式を `SELECT` 句に含め、`score` というエイリアスを付けています。そして、`ORDER BY score DESC` でスコアの降順にソートしています。`WHERE`句にも同じ`MATCH`式を入れて、スコアが0(ヒットしなかった)のものは除外しています。リポジトリのメソッドの戻り値を、エンティティクラスではなく、必要なカラムとスコアを持つカスタムインターフェース(ここでは`ArticleSearchResult`)にすることで、余分なデータ転送をなくし、結果を柔軟にマッピングできます。

ページネーションの実装

検索結果が大量になる可能性がある場合、すべての結果を一度に返すのは非効率的です。ページネーションを実装し、結果を分割して返すのが一般的です。Spring Data JPAは、`Pageable`インターフェースと`Page`クラスを通じて、ページネーションを強力にサポートしています。

ネイティブクエリでページネーションを実装するには、クエリにカウント用のクエリも追加で定義する必要があります。

// ArticleRepository.java
import org.springframework.data.domain.Page;
import org.springframework.data.domain.Pageable;

// ...

@Query(
    value = "SELECT * FROM articles WHERE MATCH(title, content) AGAINST(:keyword IN NATURAL LANGUAGE MODE)",
    countQuery = "SELECT count(*) FROM articles WHERE MATCH(title, content) AGAINST(:keyword IN NATURAL LANGUAGE MODE)",
    nativeQuery = true
)
Page<Article> searchWithPagination(@Param("keyword") String keyword, Pageable pageable);

リポジトリメソッドの引数に`Pageable`を追加し、戻り値を`Page<Article>`に変更するだけです。`countQuery`を指定することで、Spring Data JPAが総件数を効率的に取得し、ページネーション情報(総ページ数、現在のページなど)を含む`Page`オブジェクトを生成してくれます。

サービスとコントローラーもこれに合わせて修正します。

// ArticleSearchService.java
import org.springframework.data.domain.Page;
import org.springframework.data.domain.Pageable;

public Page<ArticleSearchResponse> searchArticlesWithPagination(String keyword, Pageable pageable) {
    if (keyword == null || keyword.isBlank()) {
        return Page.empty(pageable);
    }
    Page<Article> articlePage = articleRepository.searchWithPagination(keyword, pageable);
    return articlePage.map(ArticleSearchResponse::from); // Page.mapを使うとページ情報も維持したまま中身を変換できる
}

// ArticleController.java
@GetMapping("/search-paged")
public ResponseEntity<Page<ArticleSearchResponse>> searchPaged(
    @RequestParam("keyword") String keyword, 
    Pageable pageable // Spring Webが自動的に ?page=0&size=20&sort=id,desc のようなパラメータを解釈してくれる
) {
    Page<ArticleSearchResponse> results = articleSearchService.searchArticlesWithPagination(keyword, pageable);
    return ResponseEntity.ok(results);
}

これにより、`?page=1&size=10` のようにリクエストパラメータでページ番号とページサイズを指定できる、柔軟な検索APIが完成します。

パフォーマンスに関する考察と次のステップ

MySQLの全文検索は、多くのユースケースで十分なパフォーマンスと機能を提供しますが、その限界を理解することも重要です。

MySQL全文検索の限界

  • スケーラビリティ: データ量が数千万、数億件と増えてくると、インデックスのサイズが肥大化し、検索パフォーマンスが低下する可能性があります。
  • 高度な機能: 類義語展開、ファセット検索、地理空間検索、より高度なランキングアルゴリズムなど、専用検索エンジンが提供するような高度な機能は限定的です。
  • 更新のオーバーヘッド: `FULLTEXT`インデックスを持つテーブルへの書き込み(INSERT/UPDATE/DELETE)は、インデックスの再構築が伴うため、通常のインデックスよりもオーバーヘッドが大きくなる傾向があります。

Elasticsearchとの比較

より大規模で複雑な検索要件がある場合は、Elasticsearchのような専用検索エンジンの導入を検討すべきです。

項目 MySQL 全文検索 Elasticsearch
導入の容易さ 非常に容易。追加のミドルウェア不要。 別途サーバー構築・運用が必要。学習コストも高い。
パフォーマンス 中小規模のデータセットでは良好。 大規模データセットに対して極めて高速。分散構成によるスケールアウトが得意。
機能性 基本的な検索(自然言語、ブーリアン)とランキング。 集計、ファセット、地理空間検索、類義語、高度な言語解析など多機能。
データ同期 不要。トランザクション内でデータとインデックスが同期される。 データベースとElasticsearch間でデータの同期を取る仕組みが別途必要。

結論として、MySQL全文検索は「手軽に始めて、そこそこの検索機能を実現したい」場合に最適な選択肢です。プロジェクトの初期段階や、検索がアプリケーションのコア機能ではない場合に特に有効です。一方で、検索がビジネスの根幹をなすようなサービスでは、将来的にElasticsearchへの移行を見据えた設計を検討する価値があります。

まとめ

本稿では、Spring BootとMySQLを用いて、日本語対応の全文検索機能を実装する方法を、基本から応用まで網羅的に解説しました。MySQLの`FULLTEXT`インデックスとN-gramパーサーの仕組みを理解し、Spring Data JPAのネイティブクエリ機能を活用することで、比較的少ない労力で強力な検索機能をアプリケーションに組み込むことができます。さらに、関連度スコアでのソートやページネーションといった実用的な機能を加えることで、ユーザー体験を大きく向上させることが可能です。ここで紹介した技術と考え方を土台として、ぜひあなたのアプリケーションに最適な検索機能を実装してみてください。


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