Friday, June 16, 2023

Spring BootにおけるCORS設定の完全解説

フロントエンドとバックエンドが分離したモダンなWebアプリケーション開発において、開発者が必ずと言っていいほど直面する壁、それがCORS(Cross-Origin Resource Sharing)エラーです。ブラウザのコンソールに表示される「No 'Access-Control-Allow-Origin' header is present on the requested resource」というメッセージは、多くの開発者にとって悪夢の始まりを告げる合図かもしれません。しかし、CORSは単なる厄介なエラーではなく、Webのセキュリティを支える重要な仕組みの一部です。そして、Spring BootはこのCORSの問題を解決するための、非常に強力で柔軟な機能を提供しています。

この記事では、CORSエラーがなぜ発生するのか、その根本原因である「同一オリジンポリシー」から説き起こし、CORSがどのようにしてその制限を安全に乗り越えるのかを解説します。さらに、Spring Bootが提供する複数の設定方法(WebMvcConfigurerによるグローバル設定、@CrossOriginアノテーションによる個別設定、そしてSpring Securityと連携したフィルターベースの推奨設定)を、それぞれの長所・短所、そして具体的なコード例とともに徹底的に掘り下げていきます。単にエラーを解消するだけでなく、CORSの仕組みを深く理解し、アプリケーションの要件に合わせた最適な設定を選択できるようになることを目指します。

第1章: なぜCORSが必要なのか? - 同一オリジンポリシーの理解

CORSについて語る前に、その存在理由である「同一オリジンポリシー(Same-Origin Policy, SOP)」を理解することが不可欠です。同一オリジンポリシーは、Webブラウザに組み込まれた最も基本的なセキュリティモデルの一つです。

1.1. 「オリジン」とは何か?

まず、「オリジン(Origin)」という言葉の定義を明確にしましょう。オリジンは、URLの以下の3つの要素の組み合わせによって決定されます。

  • プロトコル (Scheme): http, httpsなど
  • ホスト (Host): www.example.com, api.example.com, localhostなど
  • ポート (Port): 80, 443, 8080など(省略された場合はプロトコルに応じたデフォルトポートが適用されます)

これら3つがすべて完全に一致している場合、2つのURLは「同一オリジン」であると見なされます。一つでも異なれば、それらは「クロスオリジン(Cross-Origin)」または「別オリジン」となります。

具体的な例を見てみましょう。基準となるURLを http://www.example.com/index.html とします。

比較対象のURL 結果 理由
http://www.example.com/app/main.js 同一オリジン プロトコル、ホスト、ポートがすべて一致
https://www.example.com/index.html 別オリジン プロトコルが異なる (http vs https)
http://api.example.com/data 別オリジン ホストが異なる (www.example.com vs api.example.com)
http://www.example.com:8080/index.html 別オリジン ポートが異なる (80 vs 8080)

1.2. 同一オリジンポリシーの役割

同一オリジンポリシーは、「あるオリジンから読み込まれた文書やスクリプトは、そのオリジンからのみリソースを読み込むべきである」という制約です。なぜこのような制限が必要なのでしょうか?

想像してみてください。もしこのポリシーがなければ、悪意のあるWebサイト(例: http://malicious-site.com)にアクセスしただけで、そのサイトに埋め込まれたスクリプトが、あなたがログインしている別のサイト(例: https://my-bank.com)に対して勝手にリクエストを送り、あなたの個人情報や預金残高などの機密データを盗み見ることが可能になってしまいます。ブラウザはあなたのセッション情報(クッキーなど)をリクエストに自動的に含めるため、悪意のあるスクリプトはあなたになりすまして操作できてしまうのです。

同一オリジンポリシーは、このような攻撃(クロスサイトリクエストフォージェリ - CSRF の一種)を防ぐための、ブラウザ側の防衛機構なのです。デフォルトで、JavaScriptからのXMLHttpRequestFetch APIによるクロスオリジンHTTPリクエストはブラウザによってブロックされます。

しかし、現代のWebアプリケーションでは、フロントエンド(例: Reactアプリケーションがhttp://localhost:3000で動作)とバックエンドAPI(例: Spring Bootアプリケーションがhttp://localhost:8080で動作)が別々のオリジンで提供されることが一般的です。この構成では、フロントエンドからAPIへのすべてのリクエストがクロスオリジンとなり、同一オリジンポリシーによってブロックされてしまいます。この正当なクロスオリジン間の通信を、セキュリティを確保しつつ実現するための仕組みがCORSなのです。

第2章: CORSの仕組み - プリフライトリクエストの役割

CORSは、サーバーとブラウザが特定のHTTPヘッダーを交換することで、クロスオリジンリクエストを許可するかどうかを判断するメカニズムです。これにより、サーバー側は「どのオリジンからの、どの種類のリクエストを許可するか」を明示的に示すことができます。CORSリクエストは、大きく分けて「単純リクエスト」と「プリフライトリクエスト」の2種類に分類されます。

2.1. 単純リクエスト (Simple Requests)

特定に条件下では、ブラウザは「プリフライト」と呼ばれる事前の確認リクエストなしに、直接クロスオリジンリクエストを送信します。これを「単純リクエスト」と呼びます。単純リクエストと見なされるための条件は以下の通りです。

  • メソッドが以下のいずれかであること:
    • GET
    • HEAD
    • POST
  • 手動で設定できるヘッダーが以下のいずれかのみであること:
    • Accept
    • Accept-Language
    • Content-Language
    • Content-Type (ただし、値は application/x-www-form-urlencoded, multipart/form-data, text/plain のいずれか)
  • リクエストに使用されるXMLHttpRequestUploadオブジェクトにイベントリスナーが登録されていないこと。
  • リクエストでReadableStreamオブジェクトが使用されていないこと。

単純リクエストのフローは以下のようになります。

  1. ブラウザ (クライアント) → サーバー:

    ブラウザは、実際のリクエストを送信する際に、自動的にOriginヘッダーを追加します。このヘッダーには、リクエスト元のオリジン(例: http://localhost:3000)が含まれます。

  2. サーバー → ブラウザ (クライアント):

    サーバーはリクエストを受け取り、リクエスト元のオリジンが許可されているかどうかを判断します。許可する場合、レスポンスにAccess-Control-Allow-Originヘッダーを含めて返します。このヘッダーの値には、許可するオリジン(例: http://localhost:3000)または、あらゆるオリジンを許可するワイルドカード(*)を指定します。

  3. ブラウザの判断:

    ブラウザはレスポンスを受け取ると、Access-Control-Allow-Originヘッダーを確認します。このヘッダーが存在し、かつその値がリクエストのOriginヘッダーの値と一致する(または*である)場合、ブラウザはレスポンスをJavaScriptに渡します。ヘッダーが存在しないか、値が一致しない場合、ブラウザはレスポンスを破棄し、コンソールにCORSエラーを出力します。

2.2. プリフライトリクエスト (Preflighted Requests)

単純リクエストの条件を満たさないリクエスト、例えばPUT, DELETE, PATCHメソッドを使用するリクエストや、Content-Typeapplication/jsonであるリクエスト、カスタムヘッダー(例: X-Auth-Token)を含むリクエストなどは、より複雑なフローをたどります。これらのリクエストは、サーバーに影響を与える可能性があるため、ブラウザは実際のリクエストを送信する前に、それが安全に送信できるかを確認するための「プリフライトリクエスト」を送信します。

プリフライトリクエストは、HTTPのOPTIONSメソッドを使用して送信されます。このリクエストの目的は、サーバーに「これからこういうメソッドとヘッダーでリクエストを送りたいんだけど、許可してくれますか?」と問い合わせることです。

プリフライトリクエストのフローは以下の通りです。

  1. ブラウザ → サーバー (プリフライトリクエスト):

    ブラウザは、実際のリクエストの前にOPTIONSメソッドのリクエストを送信します。このリクエストには、以下のヘッダーが含まれます。

    • Origin: リクエスト元のオリジン。
    • Access-Control-Request-Method: 実際のリクエストで使用されるHTTPメソッド(例: PUT)。
    • Access-Control-Request-Headers: 実際のリクエストで使用されるカスタムヘッダー(例: Content-Type, X-Auth-Token)。
  2. サーバー → ブラウザ (プリフライトレスポンス):

    サーバーはOPTIONSリクエストを受け取り、これから送られてくるリクエストを許可するかどうかを判断します。許可する場合、ステータスコード200 OKとともに、以下のヘッダーを含むレスポンスを返します。

    • Access-Control-Allow-Origin: リクエストを許可するオリジン。
    • Access-Control-Allow-Methods: 許可するHTTPメソッドのリスト(例: GET, POST, PUT, DELETE)。
    • Access-Control-Allow-Headers: 許可するリクエストヘッダーのリスト(例: Content-Type, X-Auth-Token)。
    • Access-Control-Max-Age: プリフライトレスポンスをブラウザがキャッシュしてよい秒数。この設定により、同じリクエストに対して毎回プリフライトリクエストが送信されるのを防ぎ、パフォーマンスを向上させることができます。
  3. ブラウザの判断と実際のリクエスト:

    ブラウザはプリフライトレスポンスを受け取り、その内容がこれから送る実際のリクエストの条件を満たしているかを確認します。条件を満たしていれば、ブラウザは初めて実際のリクエスト(例: PUTリクエスト)を送信します。条件を満たしていなければ、リクエストは送信されず、コンソールにCORSエラーが出力されます。

  4. サーバー → ブラウザ (実際のレスポンス):

    サーバーは実際のリクエストを処理し、そのレスポンスを返します。このレスポンスにも、単純リクエストの時と同様にAccess-Control-Allow-Originヘッダーが含まれている必要があります。

2.3. 認証情報付きリクエスト (Credentialed Requests)

クロスオリジンリクエストでクッキーやAuthorizationヘッダーなどの認証情報を送信する場合、追加の設定が必要です。クライアントサイド(JavaScript)では、fetch APIやXMLHttpRequestcredentials: 'include'オプションを指定する必要があります。

サーバーサイドでは、これに応答して以下の2つのヘッダーを返す必要があります。

  • Access-Control-Allow-Credentials: true: 認証情報付きリクエストを許可することを示す。
  • Access-Control-Allow-Origin: ワイルドカード(*)は使用できず、リクエスト元のオリジンを明示的に指定する必要があります。(例: http://localhost:3000

これは重要なセキュリティ上の制約です。不特定多数のオリジンからの認証情報付きリクエストを許可することは危険であるため、仕様で禁止されています。

第3章: Spring BootでのCORS設定 - 基本的なアプローチ

Spring Bootは、CORSを設定するための洗練された方法を複数提供しています。ここでは、最も一般的で基本的な2つのアプローチ、グローバル設定とアノテーションベース設定について詳しく見ていきます。

3.1. グローバル設定: WebMvcConfigurer

アプリケーション全体で一貫したCORSポリシーを適用したい場合に最も適した方法です。WebMvcConfigurerインターフェースを実装した設定クラスを作成し、addCorsMappingsメソッドをオーバーライドします。

このアプローチの利点は、設定が一箇所に集約されるため、管理が容易であることです。一方で、すべてのエンドポイントに同じポリシーが適用されるため、エンドポイントごとに細かい制御を行いたい場合には不向きかもしれません。


import org.springframework.context.annotation.Configuration;
import org.springframework.web.servlet.config.annotation.CorsRegistry;
import org.springframework.web.servlet.config.annotation.WebMvcConfigurer;

@Configuration
public class WebConfig implements WebMvcConfigurer {

    @Override
    public void addCorsMappings(CorsRegistry registry) {
        registry.addMapping("/**") // 1. CORSを適用するパスのパターンを指定
                .allowedOrigins("http://localhost:3000", "https://my-frontend.com") // 2. 許可するオリジンを指定
                .allowedMethods("GET", "POST", "PUT", "DELETE", "OPTIONS") // 3. 許可するHTTPメソッドを指定
                .allowedHeaders("*") // 4. 許可するリクエストヘッダーを指定
                .allowCredentials(true) // 5. クッキーなどの認証情報を含むリクエストを許可
                .maxAge(3600); // 6. プリフライトリクエストのキャッシュ時間を秒単位で指定
    }
}

上記のコードの詳細解説:

  1. addMapping("/**"): アプリケーションのすべてのパス(/で始まるすべてのURL)にこのCORS設定を適用します。/api/**のように、特定のパスパターンに限定することも可能です。
  2. allowedOrigins(...): リクエストを許可するオリジンのリストを文字列で指定します。本番環境では、"*"(ワイルドカード)の使用はセキュリティリスクを高めるため、フロントエンドのドメインを明示的に指定することが強く推奨されます。
  3. allowedMethods(...): 許可するHTTPメソッドを指定します。"*"を指定するとすべてのメソッドを許可します。
  4. allowedHeaders("*"): 許可するリクエストヘッダーを指定します。"*"はすべてのヘッダーを許可することを意味します。
  5. allowCredentials(true): これをtrueに設定すると、クライアントからの認証情報(クッキー、Authorizationヘッダーなど)を含むリクエストを受け入れるようになります。注意: これをtrueに設定した場合、allowedOrigins"*"を指定することはできません。Springは起動時にエラーをスローします。
  6. maxAge(3600): ブラウザがプリフライトリクエストの結果をキャッシュする時間(秒単位)です。この例では1時間です。これにより、不要なプリフライトリクエストの数を減らし、パフォーマンスを向上させることができます。

また、allowedOriginsの代わりにallowedOriginPatternsを使用することもできます。これは、http://*.example.comのように、ワイルドカードを含む動的なオリジンパターンを指定したい場合に便利です。

3.2. アノテーションベース設定: @CrossOrigin

コントローラーやメソッド単位で、より細かくCORSポリシーを制御したい場合には、@CrossOriginアノテーションが便利です。

このアプローチの利点は、特定のエンドポイントに対して直感的にCORS設定を適用できる点です。しかし、多くのコントローラーで同じ設定を繰り返すと、コードの重複や管理の煩雑化につながる可能性があります。

クラスレベルでの適用:

コントローラークラスに@CrossOriginを付与すると、そのクラス内のすべてのハンドラーメソッドに設定が適用されます。


import org.springframework.web.bind.annotation.*;

@RestController
@RequestMapping("/api/users")
@CrossOrigin(origins = "http://localhost:3000") // このコントローラー全体でlocalhost:3000からのリクエストを許可
public class UserController {

    @GetMapping
    public UserListResponse getUsers() {
        // ... ユーザーリストを返す処理
    }

    @PostMapping
    public User createUser(@RequestBody User user) {
        // ... ユーザーを作成する処理
    }
}

メソッドレベルでの適用:

メソッドに直接アノテーションを付与することで、クラスレベルの設定を上書きしたり、特定のメソッドにのみ設定を適用したりできます。


import org.springframework.web.bind.annotation.*;

@RestController
@RequestMapping("/api/articles")
@CrossOrigin(origins = "http://localhost:3000", methods = {RequestMethod.GET}) // デフォルトはGETのみ許可
public class ArticleController {

    @GetMapping("/{id}")
    public Article getArticle(@PathVariable Long id) {
        // ... 記事を取得する処理 (GETなので許可される)
    }

    // このメソッドにはより緩いCORSポリシーを適用する
    @PutMapping("/{id}")
    @CrossOrigin(origins = "http://localhost:3000", methods = {RequestMethod.PUT, RequestMethod.OPTIONS})
    public Article updateArticle(@PathVariable Long id, @RequestBody Article article) {
        // ... 記事を更新する処理 (PUTが許可されているためOK)
    }

    @DeleteMapping("/{id}")
    public void deleteArticle(@PathVariable Long id) {
        // ... 記事を削除する処理 (DELETEは許可されていないためCORSエラーになる)
    }
}

@CrossOriginアノテーションは、WebMvcConfigurerの例で見たようなプロパティ(origins, methods, allowedHeaders, allowCredentials, maxAgeなど)を属性として持っています。グローバル設定とアノテーション設定が両方存在する場合、より具体的なアノテーションの設定が優先されます。

また、exposedHeadersという重要な属性も存在します。デフォルトでは、ブラウザはCache-Control, Content-Language, Content-Type, Expires, Last-Modified, Pragmaといった単純なレスポンスヘッダーしかJavaScriptからアクセスさせません。もしサーバーがカスタムヘッダー(例: X-Total-Count)を返し、フロントエンドでそれを読み取りたい場合は、@CrossOrigin(exposedHeaders = "X-Total-Count")のように明示的に公開する必要があります。

第4章: Spring Securityとの連携 - 推奨される設定方法

Spring Securityを導入しているアプリケーションでは、CORSの設定に特別な注意が必要です。なぜなら、CORSのプリフライトリクエスト(OPTIONS)は、Spring Securityの認証・認可フィルターチェーンよりも前に処理される必要があるからです。もしSpring Securityがプリフライトリクエストをブロックしてしまうと、ブラウザは実際のリクエストを送信することなく、CORSエラーを発生させます。

これまで紹介したWebMvcConfigurer@CrossOriginによる設定は、Spring MVCのDispatcherServletのレベルで処理されます。これはSpring Securityのフィルターチェーンよりも後に実行されるため、Spring Securityが有効になっていると、プリフライトリクエストがDispatcherServletに到達する前に拒否されてしまう可能性があるのです。

この問題を解決するための最も堅牢で推奨される方法は、Spring Securityのフィルターチェーンに直接CORSの設定を組み込むことです。これにより、CORS関連の処理が他のセキュリティチェックよりも早い段階で実行されることが保証されます。

CorsFilter を利用した設定

このアプローチでは、CorsConfigurationSourceを実装したBeanを定義し、それをSpring Securityの設定に渡します。これは、グローバル設定と同様に一元管理が可能でありながら、Spring Securityのライフサイクルと正しく統合されるという利点があります。

以下は、Spring Security 6以降で推奨される、コンポーネントベースのセキュリティ設定の例です。


import org.springframework.context.annotation.Bean;
import org.springframework.context.annotation.Configuration;
import org.springframework.security.config.annotation.web.builders.HttpSecurity;
import org.springframework.security.config.annotation.web.configuration.EnableWebSecurity;
import org.springframework.security.web.SecurityFilterChain;
import org.springframework.web.cors.CorsConfiguration;
import org.springframework.web.cors.CorsConfigurationSource;
import org.springframework.web.cors.UrlBasedCorsConfigurationSource;

import java.util.Arrays;
import java.util.List;

@Configuration
@EnableWebSecurity
public class SecurityConfig {

    @Bean
    public SecurityFilterChain securityFilterChain(HttpSecurity http) throws Exception {
        http
            // 1. Spring SecurityにCORS設定を適用
            .cors(cors -> cors.configurationSource(corsConfigurationSource()))
            
            // CSRFは通常、ステートレスなAPIでは無効化する
            .csrf(csrf -> csrf.disable())
            
            // リクエストの認可設定
            .authorizeHttpRequests(auth -> auth
                .requestMatchers("/api/public/**").permitAll() // publicなAPIは誰でもアクセス可能
                .anyRequest().authenticated() // その他のリクエストは認証が必要
            );
            // ... その他のセキュリティ設定 (OAuth2, JWTなど)
        
        return http.build();
    }

    @Bean
    public CorsConfigurationSource corsConfigurationSource() {
        CorsConfiguration configuration = new CorsConfiguration();
        
        // 許可するオリジンを設定
        configuration.setAllowedOrigins(List.of("http://localhost:3000", "https://my-frontend.com"));
        
        // 許可するHTTPメソッドを設定
        configuration.setAllowedMethods(Arrays.asList("GET", "POST", "PUT", "PATCH", "DELETE", "OPTIONS"));
        
        // 許可するリクエストヘッダーを設定
        configuration.setAllowedHeaders(Arrays.asList("authorization", "content-type", "x-auth-token"));

        // 公開するレスポンスヘッダーを設定
        configuration.setExposedHeaders(List.of("x-auth-token"));
        
        // 認証情報(クッキーなど)を許可
        configuration.setAllowCredentials(true);
        
        UrlBasedCorsConfigurationSource source = new UrlBasedCorsConfigurationSource();
        // すべてのパスに上記CORS設定を適用
        source.registerCorsConfiguration("/**", configuration);
        
        return source;
    }
}

この設定のポイント:

  1. http.cors(...): この一行で、Spring SecurityのフィルターチェーンにCORS処理を組み込んでいます。これにより、Spring Securityは提供されたCorsConfigurationSourceを使用して、受信リクエストがCORSの要件を満たしているか(特にプリフライトリクエスト)を非常に早い段階でチェックします。
  2. corsConfigurationSource() Bean: ここで、具体的なCORSポリシーを定義します。CorsConfigurationオブジェクトに必要な設定(許可するオリジン、メソッド、ヘッダーなど)を行い、UrlBasedCorsConfigurationSourceにどのパスパターン(この場合は/**)にその設定を適用するかを登録します。

この方法は、Spring Securityを利用する現代的なSpring BootアプリケーションにおけるCORS設定のデファクトスタンダードと言えます。セキュリティとCORSの設定を一箇所で管理できるため、アプリケーションの全体像が把握しやすくなります。

第5章: よくある問題とデバッグ方法

CORSの設定は正しく行ったつもりでも、予期せぬエラーに遭遇することは珍しくありません。ここでは、よくある問題とその原因、そして効果的なデバッグ方法について解説します。

よくあるエラーメッセージとその原因

  • No 'Access-Control-Allow-Origin' header is present on the requested resource.

    最も一般的なエラーです。これは、サーバーからのレスポンスにAccess-Control-Allow-Originヘッダーが含まれていない、または含まれていてもリクエスト元のOriginと一致しないことを意味します。

    • 原因のチェックリスト:
      • サーバー側のCORS設定は正しいか?(パス、オリジン、メソッドなど)
      • プリフライトリクエスト(OPTIONS)がサーバーで正しく処理されているか? サーバーログでOPTIONSリクエストが届いているか、ステータスコード200で返されているか確認しましょう。
      • Spring Securityなどのフィルターが、CORS処理が行われる前にリクエストをブロックしていないか?
      • アプリケーションのどこかで例外が発生し、CORSヘッダーが付与される前の段階でエラーレスポンスが返されていないか?

  • The response to preflight request doesn't pass access control check...

    プリフライトリクエスト(OPTIONS)へのレスポンスが不正であることを示します。

    • 原因のチェックリスト:
      • プリフライトレスポンスのHTTPステータスコードが200番台でない。サーバー側でOPTIONSリクエストが何らかの理由で拒否(401 Unauthorized, 403 Forbiddenなど)されている可能性があります。特にSpring Securityを有効にしている場合、デフォルトではOPTIONSリクエストをブロックすることがあるため注意が必要です。
      • プリフライトレスポンスに必要なヘッダー(Access-Control-Allow-Origin, Access-Control-Allow-Methods, Access-Control-Allow-Headers)が不足している。

  • Credential is not supported if the CORS header 'Access-Control-Allow-Origin' is '*'

    原因はメッセージの通りです。クライアントが認証情報付きリクエスト(credentials: 'include')を送信しているにもかかわらず、サーバーがAccess-Control-Allow-Origin: *を返しています。

    • 解決策: サーバーの設定でallowCredentials(true)(または同等の設定)を行い、allowedOriginsにはワイルドカード"*"ではなく、フロントエンドのオリジンを明示的に指定します。(例: "http://localhost:3000"

効果的なデバッグ手法

CORSの問題を解決するための最も強力なツールは、ブラウザの開発者ツールです。

  1. ネットワークタブを開く:

    Google ChromeやFirefoxの開発者ツールを開き、「Network」(または「ネットワーク」)タブに切り替えます。

  2. 問題のリクエストを見つける:

    問題が発生する操作を行い、ネットワークタブに表示されるリクエストの一覧を確認します。CORSエラーが発生しているリクエストは、通常赤色で表示されます。

  3. プリフライトリクエストを確認する (該当する場合):

    リクエストのタイプがpreflightになっているOPTIONSリクエストを探します。それを選択し、「Headers」(または「ヘッダー」)タブでリクエストヘッダーとレスポンスヘッダーを詳細に確認します。

    • Request Headers: Origin, Access-Control-Request-Method, Access-Control-Request-Headersが意図通りに送信されているか確認します。
    • Response Headers: サーバーから返されたAccess-Control-Allow-*系のヘッダーが、リクエストの内容を許可するものになっているか、ステータスコードが200 OKかを確認します。
  4. 実際のリクエストを確認する:

    プリフライトリクエストが成功している場合は、次に実際のリクエスト(GET, POSTなど)を選択します。ここでも同様にヘッダーを確認します。

    • Request Headers: Originヘッダーが含まれていることを確認します。
    • Response Headers: Access-Control-Allow-Originヘッダーがレスポンスに含まれ、その値が正しいことを確認します。

この手順でヘッダーのやり取りを注意深く追跡することで、サーバー側の設定ミスなのか、クライアント側のリクエストに問題があるのか、原因を特定することができます。

結論

CORSは、一見すると複雑で厄介な制約に見えるかもしれません。しかしその本質は、悪意のあるクロスサイトスクリプティングからユーザーとアプリケーションを守るための、不可欠なセキュリティ機構です。その仕組み、特に同一オリジンポリシーとプリフライトリクエストの役割を理解すれば、CORSエラーはもはや恐れるに足りません。

Spring Bootは、WebMvcConfigurerによる一元的なグローバル設定、@CrossOriginアノテーションによる柔軟な個別設定、そしてSpring Securityと統合されたフィルターベースの堅牢な設定という、多様な選択肢を提供してくれます。アプリケーションのアーキテクチャやセキュリティ要件に応じて、これらの方法を適切に使い分けることが重要です。特に、Spring Securityを使用するアプリケーションにおいては、セキュリティフィルターチェーンにCORS設定を組み込む方法が、最も信頼性が高く推奨されるアプローチです。

CORSエラーに直面した際は、焦らずにブラウザの開発者ツールを活用し、HTTPヘッダーのやり取りを一つ一つ確認することが解決への近道です。この記事が、あなたのSpring Bootアプリケーション開発におけるCORSとの戦いを、よりスムーズで実りあるものにする一助となれば幸いです。


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