Saturday, October 18, 2025

Javaプログラミングの第一歩:JDK設定から始めるHello World

はじめに:なぜ今、Javaなのか?

数多くのプログラミング言語が生まれては消えていく現代において、Javaは驚くべき生命力と影響力を持ち続けています。1995年の登場以来、Javaはエンタープライズシステム、Androidアプリケーション開発、Webバックエンド、ビッグデータ処理、そして組み込みシステムまで、考えうるほぼすべての領域でその地位を確立してきました。なぜJavaはこれほどまでに広く、そして長く愛され続けているのでしょうか?

その答えの核心にあるのが、「Write Once, Run Anywhere(一度書けば、どこでも実行できる)」という強力な哲学です。これは、Javaが特定のオペレーティングシステムやハードウェアに依存しない、真のプラットフォーム独立性を実現していることを意味します。Windowsで開発したプログラムが、何ら変更を加えることなくmacOSやLinux、さらにはクラウドサーバー上でも全く同じように動作する。この特性が、多様な環境が混在する現代のシステム開発において、絶大な信頼性と生産性をもたらしているのです。

しかし、Javaの魅力はそれだけではありません。堅牢なオブジェクト指向プログラミング、豊富な標準ライブラリ、強力なメモリ管理機能(ガベージコレクション)、そして世界中の開発者によって築き上げられた巨大なエコシステム。これらすべてが組み合わさることで、Javaは大規模で複雑なアプリケーションを安定して構築するための、最も信頼できる選択肢の一つとなっています。

この記事は、そんな奥深いJavaの世界への第一歩を踏み出すための、包括的な道しるべです。プログラミングが全くの未経験である方でも、あるいは他の言語の経験はあるもののJavaは初めてという方でも、自信を持って学習を始められるように設計されています。私たちは、単に「Hello, World!」と表示するプログラムを作るだけでなく、その裏側で何が起きているのかを深く理解することを目指します。

  • Java開発環境の核心:JDK、JRE、JVMという、Javaを支える3つの重要なコンポーネントの役割を解き明かします。
  • 最適なJDKの選択:無数にあるJDKディストリビューションの中から、あなたの目的に合った最適なものを選ぶための知識を提供します。
  • 詳細なインストール手順:Windows、macOS、Linuxという主要な3つのOSそれぞれについて、スクリーンショットを伴うかのような詳細さでJDKのインストールと環境変数の設定手順を解説します。
  • 初めてのプログラミング:コードの一行一行が持つ意味を丁寧に解説しながら、「Hello, World!」プログラムを作成、コンパイル、実行します。
  • トラブルシューティング:初心者が陥りがちな典型的なエラーの原因と、その具体的な解決策を学びます。
  • 未来への展望:コマンドラインでの基本をマスターした先にある、IDE(統合開発環境)やビルドツールといった、より高度な開発の世界を垣間見ます。

この旅路の終わりには、あなたはJavaプログラムがどのようにして生まれ、どのようにして実行されるのかという根本的なプロセスを完全に理解し、自らの手でJavaの世界をさらに探求していくための強固な土台を築き上げていることでしょう。さあ、一緒にJavaプログラミングの壮大な冒険を始めましょう。

Java開発環境の心臓部:JDK、JRE、JVMを理解する

Javaの学習を始めるにあたり、避けては通れないのがJDK、JRE、JVMという3つの略語です。これらはJavaのプラットフォームを構成する中心的な要素であり、それぞれの役割を正確に理解することが、今後の学習をスムーズに進めるための鍵となります。これらを単なるツールの集合体としてではなく、一つの生態系として捉えることで、Javaの仕組みがより明確に見えてきます。

JVM (Java仮想マシン):プラットフォーム独立性の鍵

JVM、すなわちJava Virtual Machine(Java仮想マシン)は、Javaの最大の特徴である「Write Once, Run Anywhere」を実現するための魔法の箱です。その名の通り、JVMは物理的なコンピュータの上にソフトウェア的に構築された、もう一つの「仮想的な」コンピュータと考えることができます。

通常のプログラム(例えばC++で書かれたもの)は、コンパイルされるとその特定のOSやCPUアーキテクチャ(例:Windows x64)でしか実行できない「ネイティブコード」に変換されます。つまり、macOSやLinuxで動かすには、それぞれの環境で再度コンパイルし直す必要があります。

一方、Javaのソースコード(.javaファイル)は、コンパイラ(javac)によって、特定のOSに依存しない中間的なコードである「Javaバイトコード」(.classファイル)に変換されます。このバイトコードは、人間が直接読むのは難しいですが、どのOSのネイティブコードでもありません。そして、このバイトコードを解釈し、実行する役割を担うのがJVMです。

WindowsにはWindows用のJVM、macOSにはmacOS用のJVM、LinuxにはLinux用のJVMがそれぞれ用意されています。開発者がやるべきことは、一度だけJavaバイトコードを生成することだけ。あとは、各OSにインストールされたJVMが、その環境に最適なネイティブコードにリアルタイムで変換(または解釈)しながら実行してくれるのです。これにより、開発者はOSの違いを一切意識することなく、アプリケーションロジックの記述に集中できます。JVMが、OS間の差異という面倒な問題をすべて吸収してくれるのです。

さらにJVMは、自動メモリ管理機能であるガベージコレクションも担当しています。開発者が手動でメモリの確保や解放を行う必要がなく、不要になったオブジェクトをJVMが自動的に検知してメモリから解放してくれるため、メモリリークといった厄介なバグの発生を大幅に抑制できます。

JRE (Java実行環境):Javaアプリケーションを動かすために

JRE、すなわちJava Runtime Environment(Java実行環境)は、その名の通り、コンパイル済みのJavaアプリケーションを実行するためだけに必要なものをすべて含んだパッケージです。

具体的には、JREは以下の2つの主要な要素で構成されています。

  1. JVM:前述の通り、Javaバイトコードを実際に実行する仮想マシン本体。
  2. Javaクラスライブラリ:開発者がよく利用する基本的な機能(文字列操作、ファイル入出力、ネットワーク通信、データ構造など)をまとめた、あらかじめ用意されたクラス(プログラムの部品)の集合体です。これがあるおかげで、開発者は車輪の再発明をすることなく、高度な機能を簡単に実装できます。

したがって、もしあなたがJavaで開発されたアプリケーション(例えば、有名なサンドボックスゲーム『Minecraft: Java Edition』)をプレイしたいだけで、自分でプログラムを開発するつもりがないのであれば、必要なのはJREだけです。JREをインストールすれば、JVMと標準ライブラリが手に入り、Javaアプリケーションを動かすためのすべての準備が整います。

JDK (Java開発キット):開発者に必要なすべて

そして最後に登場するのが、私たち開発者がこれからインストールするJDK、すなわちJava Development Kit(Java開発キット)です。JDKは、Javaアプリケーションを開発するために必要なものをすべて含んだ、最も包括的なパッケージです。

JDKは、JREのすべての内容を包含しています。つまり、JDKをインストールすれば、自動的にJREもインストールされます。それに加えて、JDKには開発に特化した以下のツールが含まれています。

  • コンパイラ (javac):私たちが書いたJavaソースコード(.javaファイル)を、JVMが理解できるJavaバイトコード(.classファイル)に変換するためのツールです。
  • デバッガ (jdb):プログラムのバグを見つけて修正する際に、コードの実行を一行ずつ追跡したり、変数の値を確認したりするためのツールです。
  • アーカイバ (jar):複数の.classファイルやリソースファイルを、配布しやすい単一のJAR(Java Archive)ファイルにまとめるためのツールです。
  • ドキュメンテーションジェネレータ (javadoc):ソースコード内の特定の形式のコメントから、API仕様書などのHTMLドキュメントを自動生成するツールです。
  • その他、プロファイリングツールやモニタリングツールなど、高度な開発を支援する多くのコマンドラインツール。

まとめると、これらの関係は以下のように階層構造で表現できます。

JDK (開発用) ⊃ JRE (実行用) ⊃ JVM (実行の核)

  • ユーザーはJavaアプリを動かすためにJREをインストールします。
  • 開発者はJavaアプリを作るためにJDKをインストールします。

私たちはこれからJavaプログラムを「開発」するので、インストールするのはもちろんJDKです。

最適なJDKの選択:Oracle JDK vs OpenJDK

「JDKをインストールする」と一言で言っても、実はJDKには様々な「ディストリビューション(配布形態)」が存在します。これはLinuxの世界でUbuntuやCentOS、Fedoraといったディストリビューションが存在するのと似ています。すべてのJDKの根源にはOpenJDKというオープンソースプロジェクトがありますが、各企業がこのOpenJDKをベースに、独自のサポートや追加機能、ライセンスポリシーを付与して配布しています。

かつてはOracle社が提供する「Oracle JDK」がほぼ唯一の選択肢でしたが、現在では状況が大きく変わりました。特にライセンスポリシーの変更以降、多くの開発者や企業がOracle JDK以外の選択肢を検討するようになっています。初心者にとっても、この違いを理解しておくことは重要です。

OpenJDKとは?

OpenJDKは、Javaプラットフォームの公式リファレンス実装であり、すべてのJava技術の源流となるオープンソースプロジェクトです。現在、Javaの新機能はすべてこのOpenJDKプロジェクトで開発・議論され、実装されています。GPL v2というオープンソースライセンスの下で提供されており、誰でも自由に利用、改変、再配布することができます。

現在存在するほぼすべてのJDKディストリビューションは、このOpenJDKのソースコードを元にビルドされています。つまり、基本的な機能や性能において、ディストリビューション間で大きな差異はありません。

Oracle JDKとの違い:ライセンスとサポート

Oracle JDKは、Oracle社がOpenJDKをベースにビルドし、追加の機能(一部のプロファイリングツールなど)や、同社独自のインストーラーを付けて提供しているものです。かつては商用利用でも無料でしたが、Java 11以降、ライセンスポリシーが変更されました。

現在のOracle JDKは、「NFTC (Oracle No-Fee Terms and Conditions)」というライセンスの下で提供されており、開発や本番環境での利用を含め、原則として無料で利用できます。しかし、これは永続的なものではなく、将来的に変更される可能性もゼロではありません。また、長期サポート(LTS)バージョンに対するアップデートの提供期間なども、有償のJava SE Subscription契約を結んでいる顧客が優先される傾向があります。

このライセンスの複雑さから、多くの企業や開発者は、よりシンプルで完全にオープンソースなライセンスを持つ他のOpenJDKディストリビューションを選択するようになりました。

初心者におすすめのJDKディストリビューション

では、初心者はどのJDKを選べばよいのでしょうか?結論から言うと、特別な理由がない限り、Oracle JDK以外の主要なOpenJDKディストリビューションを選択するのが最も安全で簡単です。 これらはライセンスを気にすることなく、完全無料で利用でき、コミュニティによる活発なサポートも受けられます。以下に代表的なものをいくつか紹介します。

  • Eclipse Adoptium (旧AdoptOpenJDK):

    Eclipse Foundationが主導するプロジェクトで、高品質でベンダーニュートラルなOpenJDKビルドを提供しています。非常に多くの企業がサポートしており、コミュニティ版JDKのデファクトスタンダードと見なされています。安定しており、長期サポート(LTS)バージョンも確実に提供されるため、初心者にとって最もおすすめの選択肢の一つです。

  • Amazon Corretto:

    Amazonが社内利用のためにビルドし、一般にも公開しているOpenJDKディストリビューションです。Amazonによる長期サポートが無料で提供されるのが最大の特徴で、パフォーマンスの改善やセキュリティパッチも迅速に適用されます。AWS(Amazon Web Services)との親和性も高く、クラウドネイティブなアプリケーション開発を目指すなら有力な選択肢です。

  • Microsoft Build of OpenJDK:

    Microsoftが自社のAzureサービスや開発ツール(Visual Studio Codeなど)での利用を念頭に置いてビルドしているOpenJDKです。こちらも長期サポートが無料で提供され、特にWindows環境やVS Codeでの開発との連携がスムーズです。

この記事では、特定のベンダーに依存しないEclipse Adoptiumを基準に解説を進めますが、どのディストリビューションを選んでも、これから行うインストール手順やプログラミングの方法に違いはありません。安心して好みのものを選んでください。

バージョンについては、LTS (Long-Term Support) と記載されているバージョンを選ぶのが基本です。LTSバージョンは長期間にわたってセキュリティアップデートやバグ修正が提供されるため、安定した開発が可能です。本稿執筆時点での最新LTSはJava 17やJava 21ですので、これらのいずれかをインストールすることをお勧めします。

ステップ・バイ・ステップ:JDKのインストール

いよいよ、あなたのコンピュータにJava開発環境を構築します。ここでは、Windows 11/10、macOS、Linux (Ubuntu) の3つの主要なオペレーティングシステムについて、それぞれの手順を詳しく解説します。自分の環境に合ったセクションを参照してください。

Windows 11/10 でのJDKインストール

Windowsでは、グラフィカルなインストーラー(.msi)を使用するのが最も簡単で確実な方法です。

1. インストーラーのダウンロード

  1. Webブラウザを開き、「Eclipse Adoptium」と検索するか、直接 `https://adoptium.net/` にアクセスします。
  2. トップページに、あなたのOS環境を自動で検知したダウンロードボタンが表示されているはずです。「Latest LTS Release」と書かれたボタンをクリックして、インストーラーをダウンロードします。バージョンが複数ある場合は、最新のLTS(例:21)を選択してください。アーキテクチャは通常「x64」で問題ありません。
  3. ダウンロードが完了すると、OpenJDK21U-jdk_x64_windows_hotspot_...msi のような名前のファイルがダウンロードフォルダに保存されます。

2. インストールウィザードの実行

  1. ダウンロードした.msiファイルをダブルクリックして、インストーラーを起動します。セキュリティ警告が表示された場合は、「実行」または「はい」をクリックします。
  2. 「Welcome to the Eclipse Temurin JDK with HotSpot Setup Wizard」という画面が表示されます。「Next」をクリックします。
  3. ライセンス同意画面が表示されます。内容を確認し、「I accept the terms in the License Agreement」のチェックボックスをオンにして、「Next」をクリックします。
  4. カスタムセットアップ画面が表示されます。ここが非常に重要です。各項目が何を設定するのかを理解しましょう。
    • Add to PATH: これを設定すると、コマンドプロンプトやPowerShellのどこからでもjavajavacコマンドを実行できるようになります。通常は「Will be installed on local hard drive」を選択します。必ず設定してください。
    • Set JAVA_HOME variable: これを設定すると、後述するJAVA_HOME環境変数を自動で設定してくれます。多くの開発ツールがこの変数を参照するため、こちらも「Will be installed on local hard drive」を選択することを強く推奨します。必ず設定してください。
    • JavaSoft (Oracle) registry keys: Javaに関連する情報をWindowsのレジストリに書き込みます。互換性のために設定しておくと良いでしょう。「Will be installed on local hard drive」を選択します。

    要するに、すべての項目がローカルハードドライブにインストールされるように設定するのが最も簡単で間違いがありません。

  5. 設定を確認したら、「Next」をクリックします。
  6. 「Ready to install」画面が表示されます。「Install」ボタンをクリックすると、インストールが開始されます。管理者権限の昇格を求めるダイアログが表示されたら、「はい」をクリックします。
  7. インストールが完了すると、「Completed the Eclipse Temurin JDK...」という画面が表示されます。「Finish」をクリックしてウィザードを閉じます。

以上で、WindowsへのJDKのインストールは完了です。Adoptiumのインストーラーは環境変数の設定も自動で行ってくれるため、非常に便利です。

macOS でのJDKインストール

macOSでは、パッケージマネージャーであるHomebrewを使用する方法と、公式のインストーラー(.pkg)を使用する方法の2つが主流です。

方法1: Homebrewを使った簡単なインストール(推奨)

HomebrewはmacOS用のパッケージ管理システムで、コマンド一つで様々なソフトウェアを簡単にインストールできます。まだインストールしていない場合は、まずターミナルを開いて以下のコマンドを実行し、Homebrewをインストールしてください。

/bin/bash -c "$(curl -fsSL https://raw.githubusercontent.com/Homebrew/install/HEAD/install.sh)"

Homebrewの準備ができたら、JDKのインストールは非常に簡単です。

  1. ターミナル(Terminal.app)を開きます。
  2. 以下のコマンドを実行して、AdoptiumのJDK(temurin)をインストールします。バージョン21をインストールする場合は以下のようになります。 brew install --cask temurin@21

    もし最新のLTSバージョンをインストールしたい場合は、単に brew install --cask temurin と実行します。

  3. Homebrewが自動的にJDKをダウンロードし、適切な場所(通常は `/Library/Java/JavaVirtualMachines/`)にインストールしてくれます。環境変数へのシンボリックリンクなども自動で設定されるため、手動での設定は基本的に不要です。

この方法が最も簡単で、後のアップデート管理も `brew upgrade` で行えるため、macOSユーザーには強く推奨されます。

方法2: 公式インストーラー(.pkg)を使った方法

  1. Windowsの場合と同様に、Adoptiumの公式サイト (`https://adoptium.net/`) にアクセスします。
  2. OSとして「macOS」、アーキテクチャとして「x64」(Intel Macの場合)または「AArch64」(Apple Silicon Macの場合)を選択し、LTSバージョンの「.pkg」ファイルをダウンロードします。
  3. ダウンロードした.pkgファイルをダブルクリックしてインストーラーを起動します。
  4. 画面の指示に従い、「続ける」や「インストール」をクリックしていきます。途中でパスワードの入力を求められたら、Macのログインパスワードを入力します。
  5. 「インストールが完了しました」と表示されれば成功です。

この方法でも問題なくインストールできますが、Homebrewを使った方が管理が楽になります。

Linux (Ubuntu) でのJDKインストール

UbuntuやDebian系のLinuxディストリビューションでは、aptパッケージマネージャーを使用するのが一般的です。

  1. ターミナルを開きます。
  2. まず、パッケージリストを最新の状態に更新します。 sudo apt update
  3. 次に、Adoptiumのリポジトリをシステムに追加するための準備をします。 sudo apt install -y wget apt-transport-https
  4. AdoptiumのGPGキーを追加して、パッケージが正当なものであることをシステムに伝えます。 sudo mkdir -p /etc/apt/keyrings
    wget -qO - https://packages.adoptium.net/artifactory/api/gpg/key/public | sudo tee /etc/apt/keyrings/adoptium.asc
  5. Adoptiumのリポジトリをaptのソースリストに追加します。 echo "deb [signed-by=/etc/apt/keyrings/adoptium.asc] https://packages.adoptium.net/artifactory/deb $(lsb_release -cs) main" | sudo tee /etc/apt/sources.list.d/adoptium.list
  6. 再度パッケージリストを更新して、新しいリポジトリを認識させます。 sudo apt update
  7. これで準備が整いました。以下のコマンドでJDK 21をインストールします。 sudo apt install temurin-21-jdk
  8. インストールが完了すると、システムは自動的に新しいJavaをデフォルトとして設定します。

もしシステムに複数のJavaバージョンがインストールされている場合、update-alternativesコマンドで切り替えることができます。

sudo update-alternatives --config java

このコマンドを実行すると、インストールされているJavaの一覧が表示され、デフォルトで使用するバージョンを番号で選択できます。javacについても同様に設定可能です。

環境変数の設定:Javaへの道を拓く

AdoptiumのWindowsインストーラーやmacOSのHomebrewを使った場合、このステップの大部分は自動化されています。しかし、手動でインストールした場合や、Linux環境、あるいは何らかの理由で自動設定がうまくいかなかった場合に備えて、環境変数の設定方法を理解しておくことは極めて重要です。また、これがどのように機能するのかを知ることは、コンピュータの動作に関する深い理解にも繋がります。

なぜ環境変数が必要なのか?

環境変数とは、オペレーティングシステム全体で共有される、名前と値のペアで構成された設定情報です。プログラムはこれらの変数を参照することで、システムの設定や状態を知ることができます。

Java開発において特に重要なのは、PATHJAVA_HOMEの2つです。

  • PATH:

    私たちがターミナルやコマンドプロンプトでjavacjavaのようなコマンドを入力したとき、OSはどこでその実行ファイルを探せばよいのでしょうか?OSは、PATH環境変数に登録されているディレクトリのリストを、順番に一つずつ調べていきます。そして、最初に見つかった実行ファイルを実行します。JDKをインストールすると、javac.exejava.exeといった実行ファイルはJDKのインストールフォルダ内のbinディレクトリに置かれます。したがって、このbinディレクトリのパスをPATH環境変数に追加することで、どのディレクトリからでもjavacjavaコマンドが実行できるようになるのです。これを行わないと、毎回C:\Program Files\Eclipse Adoptium\jdk-21.0.1.12-hotspot\bin\javac.exeのように非常に長いフルパスを入力しなければならず、現実的ではありません。

  • JAVA_HOME:

    こちらはJavaに特化した環境変数です。JAVA_HOMEには、JDKがインストールされているルートディレクトリ(binの一つ上の階層)のパスを設定します。多くのサードパーティ製の開発ツール(例えば、ビルドツールのMavenやGradle、統合開発環境のIntelliJ IDEAやEclipseなど)は、システム上のJavaの場所を見つけるために、まずこのJAVA_HOME変数を参照するように作られています。PATHだけを設定してもJavaのコンパイルや実行は可能ですが、JAVA_HOMEを設定しておくことで、これらのツールとの連携がスムーズになり、将来的なトラブルを未然に防ぐことができます。また、システムに複数のバージョンのJDKをインストールしている場合、JAVA_HOMEを切り替えるだけで、ツールが使用するJDKのバージョンを簡単に変更できるという利点もあります。

Windowsでの環境変数設定

Adoptiumのインストーラーで自動設定を有効にしなかった場合や、手動で設定を確認・変更したい場合は、以下の手順に従います。

  1. まず、JDKのインストールパスを確認します。通常はC:\Program Files\Eclipse Adoptium\jdk-21.0.1.12-hotspotのようなパスです。エクスプローラーでこのパスをコピーしておきます。バージョン番号は適宜読み替えてください。
  2. スタートメニューを開き、「環境変数」と入力します。検索結果に「システム環境変数の編集」が表示されるので、それをクリックします。
  3. 「システムのプロパティ」ダイアログが表示されるので、右下の「環境変数...」ボタンをクリックします。
  4. 「環境変数」ダイアログが表示されます。下半分の「システム環境変数」のセクションで作業を行います。
  5. JAVA_HOMEの設定:
    • 「システム環境変数」の「新規...」ボタンをクリックします。
    • 「新しいシステム変数」ダイアログで、変数名にJAVA_HOMEと入力します。
    • 変数値に、先ほどコピーしたJDKのインストールパス(例: C:\Program Files\Eclipse Adoptium\jdk-21.0.1.12-hotspot)を貼り付けます。
    • 「OK」をクリックします。
  6. Pathの設定:
    • 「システム環境変数」の一覧からPath(またはPATH)という変数を見つけて選択し、「編集...」ボタンをクリックします。
    • 「環境変数名の編集」ダイアログが表示されます。右側の「新規」ボタンをクリックします。
    • 新しい入力欄が表示されるので、%JAVA_HOME%\binと入力します。%JAVA_HOME%という記述は、先ほど設定したJAVA_HOME変数の値を参照するという意味です。これにより、将来JDKのバージョンをアップグレードした際に、JAVA_HOMEの値を変更するだけでPathも自動的に更新されるようになり、メンテナンスが非常に楽になります。
    • 「上へ」ボタンを使って、追加したエントリをリストのできるだけ上の方(ただし、Windows関連のパスよりは下)に移動させておくと、他のプログラムがインストールした古いJavaよりも優先して読み込まれるようになります。
    • 「OK」をクリックして、すべてのダイアログを閉じます。

重要: 環境変数を変更した後は、既に開いているコマンドプロンプトやPowerShellのウィンドウをすべて閉じ、新しく開き直す必要があります。そうしないと、変更が反映されません。

macOS / Linuxでの環境変数設定

macOSやLinuxでは、シェルの設定ファイルに環境変数を追記するのが一般的です。使用しているシェルによって編集するファイルが異なります。

  • Zsh (macOS Catalina以降のデフォルト): ~/.zshrc
  • Bash (多くのLinuxディストリビューションや古いmacOSのデフォルト): ~/.bash_profile または ~/.bashrc

ここでは、macOSのデフォルトであるZshを例に説明します。Bashの場合もコマンドは同じで、ファイル名が異なるだけです。

  1. まず、インストールされたJDKのパスを確認する必要があります。ターミナルで以下のコマンドを実行します。 /usr/libexec/java_home -v 21

    これにより、バージョン21のJDKのホームパス(例: /Library/Java/JavaVirtualMachines/temurin-21.jdk/Contents/Home)が出力されます。このパスをコピーしておきます。

  2. 次に、テキストエディタでシェルの設定ファイルを開きます。ここではコマンドラインエディタのnanoを使ってみましょう。 nano ~/.zshrc
  3. ファイルの末尾に、以下の2行を追記します。
    export JAVA_HOME=$(/usr/libexec/java_home -v 21)
    export PATH="$JAVA_HOME/bin:$PATH"

    一行目は、java_homeコマンドの実行結果をJAVA_HOME変数に設定しています。これにより、JDKがアップデートされても自動で正しいパスが設定されるため、非常に便利です。

    二行目は、JAVA_HOMEbinディレクトリを既存のPATHの先頭に追加しています。$PATHで既存のパスを展開し、コロン:で連結するのがUnix系OSの作法です。

  4. ファイルを保存してエディタを終了します。nanoの場合は、Ctrl + Xを押し、次にYを押し、最後にEnterを押します。
  5. 最後に、変更を現在のターミナルセッションに反映させるために、以下のコマンドを実行します。 source ~/.zshrc

    もしくは、ターミナルを新しく開いても構いません。

動作確認:インストールは成功したか?

すべての設定が完了したら、正しくインストールされたかを確認しましょう。この確認作業は、問題の早期発見に繋がる重要なステップです。

新しくコマンドプロンプト(Windows)またはターミナル(macOS/Linux)を開いて、以下のコマンドを一つずつ実行してください。

1. Java実行環境のバージョン確認

コマンド:

java -version

このコマンドは、インストールされているJavaの実行環境(JRE)のバージョン情報を表示します。成功すれば、以下のような出力が表示されるはずです。

openjdk version "21.0.1" 2023-10-17
OpenJDK Runtime Environment Temurin-21.0.1+12 (build 21.0.1+12-LTS)
OpenJDK 64-Bit Server VM Temurin-21.0.1+12 (build 21.0.1+12-LTS, mixed mode, sharing)

ここで重要なのは、インストールしたはずのバージョン(この例では21.0.1)が表示されていることです。もし予期しない古いバージョンが表示された場合は、PATH環境変数の順序が原因で、システム上の別のJavaが優先されている可能性があります。

2. Javaコンパイラのバージョン確認

コマンド:

javac -version

このコマンドは、Javaのコンパイラのバージョン情報を表示します。成功すれば、以下のような出力が表示されます。

javac 21.0.1

java -versionjavac -versionの両方が、同じバージョン番号を正しく表示すれば、インストールと環境変数の設定は完璧に成功しています。

よくあるエラーとトラブルシューティング

もし上記のコマンドがうまくいかない場合、パニックになる必要はありません。初心者が遭遇するエラーのほとんどは、典型的な設定ミスが原因です。

  • エラーメッセージ:

    'java' is not recognized as an internal or external command, operable program or batch file. (Windows)

    -bash: java: command not found (macOS/Linux)

    原因: このエラーは、OSがPATH環境変数に設定されたどのディレクトリの中を探しても、java(またはjavac)という実行ファイルを見つけられなかったことを意味します。

    解決策:

    1. JDKのbinディレクトリのパスが、PATH環境変数に正しく追加されているか再確認してください。タイプミスがないか、ディレクトリの区切り文字(Windowsでは\、macOS/Linuxでは/)が正しいかを確認します。
    2. 環境変数の設定を変更した後は、必ずコマンドプロンプトやターミナルを新しく開き直してください。古いウィンドウでは変更が反映されません。
    3. Windowsの場合、%JAVA_HOME%\binと設定したなら、JAVA_HOME変数自体が正しく設定されているかも確認します。
  • 問題:

    コマンドは成功するが、意図しない古いバージョン(Java 8など)が表示される。

    原因: PATH環境変数の中に、新しく追加したJDKのパスよりも前に、古いJavaのパスが記述されているためです。

    解決策:

    1. 環境変数の編集画面を開き、Path変数の中身を確認します。
    2. 新しく追加したパス(例: %JAVA_HOME%\bin)を、リストの上位に移動させます。これにより、OSがコマンドを探す際に、新しいバージョンが先に見つかるようになります。

最初のプログラム:「Hello, World!」の作成

開発環境の準備が整いました。いよいよ、プログラミングの世界における伝統的な最初の儀式、「Hello, World!」プログラムを作成します。これは単に文字列を表示するだけの単純なプログラムですが、Javaの基本的な構造、コンパイル、実行という一連の流れを体験するための、非常に重要なステップです。

ソースファイルの準備

まず、Javaのソースコードを記述するためのファイルを作成します。

  1. 好きな場所に、このプロジェクト用の新しいフォルダを作成しましょう。例えば、デスクトップにjava_practiceという名前のフォルダを作成します。
  2. 次に、テキストエディタを開きます。Windowsなら「メモ帳」、macOSなら「テキストエディット」で十分ですが、Visual Studio Codeのような高機能なエディタを使えるなら、それが理想的です。
  3. エディタに、以下のコードを一字一句間違えずに入力します。大文字と小文字は厳密に区別されるので、注意してください。
    
    public class HelloWorld {
        public static void main(String[] args) {
            System.out.println("Hello, World!");
        }
    }
        
  4. ファイルを保存します。ここで非常に重要なルールがあります。ファイル名は、public classの後に続くクラス名と完全に一致させ、拡張子を.javaにする必要があります。今回のクラス名はHelloWorldなので、ファイル名はHelloWorld.javaとしなければなりません。
  5. 保存先は、先ほど作成したjava_practiceフォルダです。

これで、Javaのソースファイルが完成しました。

コードの詳解

では、先ほど書いたコードが一体何をしているのか、一行ずつ分解して見ていきましょう。

public class HelloWorld { ... }

  • class: Javaはオブジェクト指向言語であり、すべてのコードはクラスという単位の中に記述されます。クラスは、データ(変数)と振る舞い(メソッド)をまとめた設計図のようなものです。ここでは、HelloWorldという名前のクラスを定義しています。
  • public: これは「アクセス修飾子」と呼ばれ、このクラスがどこからでもアクセス可能(公開されている)であることを意味します。ファイル名と同じ名前を持つクラスは、通常publicにします。
  • { ... }: この波括弧は、クラスの範囲(ブロック)を示します。HelloWorldクラスの定義は、この波括弧の中で行われます。

public static void main(String[] args) { ... }

これは「mainメソッド」と呼ばれる、非常に特殊で重要な部分です。Javaプログラムを実行すると、JVMは必ずこのmainメソッドを探し出し、ここからプログラムの実行を開始します。つまり、プログラムのエントリーポイント(入口)です。

  • public: このメソッドが、クラスの外部(具体的にはJVM)から呼び出し可能であることを示します。
  • static: このキーワードが付いたメソッドは、クラスのインスタンス(実体)を生成しなくても呼び出せることを意味します。JVMはプログラムを開始する際に、まだどのオブジェクトも存在しない状態からmainメソッドを呼び出す必要があるため、staticである必要があります。
  • void: これは、このメソッドが処理を終えた後に、何も値を返さない(戻り値がない)ことを示します。
  • main: これがメソッドの名前です。この名前は規約で決まっており、変更することはできません。
  • (String[] args): これは、メソッドが受け取る引数(パラメータ)を定義しています。プログラムを実行する際に、外部から情報(コマンドライン引数)を渡すことができます。String[]は文字列(String)の配列([])を意味し、argsはその配列を指す変数名です。今回は使いませんが、この形式は決まり文句として書く必要があります。

System.out.println("Hello, World!");

これが、実際に画面に文字列を表示する処理を行っている部分です。

  • System: Javaの標準ライブラリに含まれるクラスで、標準入出力や環境変数など、システムに関連する機能を提供します。
  • out: Systemクラスが持つ静的なフィールド(変数)で、標準出力ストリーム(通常はコンソール画面)を表すオブジェクトです。
  • println(): outオブジェクトが持つメソッドで、引数に渡された文字列を画面に表示し、最後に改行を行います。printメソッドもあり、こちらは改行しません。
  • "Hello, World!": 表示したい文字列リテラルです。ダブルクォーテーションで囲みます。
  • ;: セミコロンは、Javaにおいて文の終わりを示す重要な記号です。これを忘れるとコンパイルエラーになります。

コンパイルと実行:コードに命を吹き込む

ソースコードが完成したら、次はいよいよそれをコンピュータが実行できる形式に変換し、動かしてみます。このプロセスは「コンパイル」と「実行」の2つのステップに分かれています。

コンパイル:人間語からマシン語へ (javac)

コンパイルとは、私たちが書いた人間が読みやすいJavaソースコード(.javaファイル)を、JVMが理解できるJavaバイトコード(.classファイル)に変換する作業です。この役割を担うのが、JDKに含まれるJavaコンパイラ、javacです。

  1. コマンドプロンプトまたはターミナルを開きます。
  2. cdコマンドを使って、先ほどHelloWorld.javaを保存したjava_practiceフォルダに移動します。

    Windowsの場合: cd Desktop\java_practice

    macOS/Linuxの場合: cd Desktop/java_practice

    (パスは各自の環境に合わせて調整してください)

  3. 以下のコマンドを実行して、ソースファイルをコンパイルします。 javac HelloWorld.java
  4. 何もメッセージが表示されずに、コマンドプロンプトが再び表示されれば、コンパイルは成功です。もしエラーメッセージが表示された場合は、ソースコードにタイプミスがないか、ファイル名とクラス名が完全に一致しているかなどを確認してください。
  5. java_practiceフォルダの中を確認してみてください。新しくHelloWorld.classというファイルが生成されているはずです。これがJavaバイトコードです。このファイルはバイナリデータなので、テキストエディタで開いても意味不明な文字が表示されるだけです。

このHelloWorld.classファイルこそが、Javaのプラットフォーム独立性の源です。このファイルさえあれば、Windows、macOS、Linuxなど、JVMがインストールされているあらゆる環境で、ソースコードなしにプログラムを実行することができます。

実行:JVMの舞台 (java)

コンパイルによって生成された.classファイルを、JVM上で実行します。この役割を担うのがjavaコマンドです。

  1. コンパイル時と同じく、java_practiceフォルダにいることを確認します。
  2. 以下のコマンドを実行します。 java HelloWorld

    注意点: 実行時には、ファイル名の拡張子.class付けません。JVMに実行してほしいクラスの名前を指定する、と覚えてください。

  3. コマンドを実行すると、コンソールに以下のように表示されるはずです。
    Hello, World!
        

おめでとうございます!あなたはJava開発者としての記念すべき第一歩を、成功裏に踏み出しました。

java HelloWorldコマンドが実行されると、内部では以下のことが起きています。

  1. JVMが起動します。
  2. JVMは、指定されたHelloWorldという名前のクラス(HelloWorld.classファイル)を探して、メモリに読み込みます(クラスローディング)。
  3. JVMは、読み込んだクラスの中から、public static void main(String[] args)というシグネチャを持つmainメソッドを探します。
  4. mainメソッドを見つけると、その中の処理を上から順に実行していきます。
  5. System.out.println("Hello, World!");が実行され、コンソールに文字列が表示されます。
  6. mainメソッドの最後まで処理が終わると、プログラムは正常に終了します。

初心者が陥りがちな落とし穴と解決策

プログラミング学習の過程でエラーはつきものです。ここでは、Java初心者が特に遭遇しやすい典型的なエラーとその原因、解決策をまとめました。エラーメッセージを読むことを恐れず、何が問題なのかを理解する手がかりにしましょう。

エラーケース1: javac: command not found

状況: javac HelloWorld.java を実行した際に発生。

メッセージ例 (Linux/macOS): -bash: javac: command not found

原因: これは、先述の動作確認でも触れた通り、PATH環境変数の設定が正しくないことを示しています。OSがjavacという実行ファイルを見つけられませんでした。

解決策:

  1. 「環境変数の設定」のセクションに戻り、PATHの設定手順を再確認してください。
  2. JDKのインストールパスが正しいか、binディレクトリまで含めて設定されているかを確認します。
  3. 設定を変更した後は、必ずターミナルやコマンドプロンプトを再起動してください。

エラーケース2: error: class HelloWorld is public, should be declared in a file named HelloWorld.java

状況: javacコマンドでのコンパイル時に発生。

原因: Javaの厳格なルールのひとつで、publicなクラスはそのクラス名と全く同じ名前の.javaファイルに保存されなければならない、という規則に違反しています。

解決策:

  1. ソースファイル内のクラス名(public class HelloWorld)と、ファイル名(HelloWorld.java)が、大文字・小文字を含めて完全に一致しているかを確認してください。
  2. 例えば、クラス名がHelloWorldなのにファイル名がhelloworld.javaHelloworld.javaになっていると、このエラーが発生します。ファイル名を正しいものにリネームしてください。

エラーケース3: Error: Could not find or load main class HelloWorld

状況: コンパイルは成功し、HelloWorld.classファイルは存在するのに、java HelloWorldコマンドで実行した際に発生。

原因: JVMが、実行すべきクラスファイル(.class)を見つけられなかった場合にこのエラーが発生します。主な原因はいくつか考えられます。

解決策:

  1. コマンドを実行する場所が違う: 最もよくある原因です。javaコマンドは、対象の.classファイルが存在するディレクトリで実行する必要があります。cdコマンドでHelloWorld.classがあるフォルダに移動しているか確認してください。
  2. クラス名を間違えている: javaコマンドの後ろに指定するクラス名が、大文字・小文字を含めて正しいか確認してください。java helloworldのように入力するとエラーになります。
  3. 拡張子を付けてしまっている: java HelloWorld.classのように、誤って拡張子を付けて実行しようとするとこのエラーが発生します。実行時はjava HelloWorldと、クラス名のみを指定します。
  4. クラスパスの問題(やや高度): プログラムがより複雑になると、クラスパス(JVMがクラスファイルを探しに行く場所のリスト)の設定が必要になることがあります。しかし、「Hello, World!」の段階では、カレントディレクトリ(現在いるディレクトリ)が自動的にクラスパスに含まれるため、上記の原因をチェックすれば解決することがほとんどです。

エラーケース4: Main method not found in class HelloWorld

状況: java HelloWorldコマンドでの実行時に発生。

メッセージ例: Error: Main method not found in class HelloWorld, please define the main method as: public static void main(String[] args)

原因: JVMはHelloWorld.classファイルを見つけることはできましたが、その中にプログラムの開始点であるべきmainメソッドを見つけられませんでした。

解決策:

  1. ソースコード(HelloWorld.java)を開き、mainメソッドの定義を注意深く確認してください。
  2. public static void main(String[] args)というシグネチャ(メソッドの形式)が、一字一句正確に記述されているかを確認します。
    • mainMainになっていないか?
    • StringSが大文字になっているか?
    • voidstaticを書き忘れていないか?
    • 引数のString[] argsが正しく書かれているか?
  3. ソースコードを修正した場合は、再度javac HelloWorld.javaでコンパイルしてからjava HelloWorldで実行する必要があることを忘れないでください。古い.classファイルのままでは修正は反映されません。

次のステップへ:Javaの世界をさらに探求する

コマンドラインを使ってJavaプログラムをコンパイルし、実行する基本をマスターしたあなたは、Javaプログラミングの広大な世界を探検する準備が整いました。ここからは、より効率的で本格的な開発を行うためのツールや、次に学ぶべき概念について紹介します。

統合開発環境(IDE)の導入

これまでテキストエディタとコマンドラインを使ってきましたが、実際の開発現場では、統合開発環境(IDE: Integrated Development Environment)を使用するのが一般的です。IDEは、コードエディタ、コンパイラ、デバッガなど、開発に必要なツールを一つのアプリケーションに統合したものです。IDEを使うことで、以下のような多くの恩恵を受けられます。

  • コード補完: コードを途中まで入力すると、候補を自動で表示してくれます。タイプミスを減らし、生産性を劇的に向上させます。
  • シンタックスハイライト: キーワードや変数などを色分け表示してくれるため、コードの可読性が向上します。
  • リアルタイムエラーチェック: コードを書いている最中から文法的な誤りを検出し、下線などで知らせてくれます。コンパイルする前にエラーに気づくことができます。
  • 簡単なコンパイルと実行: ボタン一つでコンパイルと実行を自動で行ってくれます。
  • 強力なデバッグ機能: プログラムを一行ずつ実行したり、変数の値を監視したりできるため、バグの発見と修正が容易になります。

Java開発で人気のある主要なIDEは以下の3つです。

  1. IntelliJ IDEA: JetBrains社が開発する、非常に高機能で賢いIDEです。強力なコード解析とリファクタリング機能に定評があり、多くのプロフェッショナルに支持されています。無料のCommunity Editionと、Web開発などの機能が追加された有償のUltimate Editionがあります。初心者はまずCommunity Editionから始めるのが良いでしょう。
  2. Eclipse: 長い歴史を持つオープンソースのIDEです。非常に多くのプラグインが存在し、カスタマイズ性が高いのが特徴です。Java開発の定番として、今なお多くのプロジェクトで利用されています。
  3. Visual Studio Code (VS Code): Microsoftが開発する軽量なコードエディタですが、「Extension Pack for Java」という拡張機能をインストールすることで、本格的なJava用IDEとして利用できます。起動が高速で、シンプルなUIを好む開発者に人気があります。

これらのIDEのいずれかをインストールし、Hello WorldプロジェクトをIDE上で作成してみることは、あなたの次の素晴らしいステップとなるでしょう。

ビルドツール:MavenとGradle

プロジェクトが大きくなり、複数のソースファイルや外部のライブラリ(他の開発者が作成した便利なプログラム部品)を利用するようになると、手動でのコンパイルや依存関係の管理が非常に煩雑になります。そこで登場するのがビルドツールです。

ビルドツールは、ソースコードのコンパイル、テストの実行、ライブラリのダウンロード(依存関係管理)、実行可能な形式(JARファイルなど)へのパッケージングといった、ビルドに関する一連の作業を自動化してくれます。Javaの世界では、MavenGradleが2大ビルドツールとして広く使われています。

これらのツールを学ぶことで、より体系的で再現性の高いプロジェクト管理が可能になります。

基本的なプログラミング概念へ

「Hello, World!」は入口に過ぎません。これからあなたは、プログラミングの基本的な構成要素を学んでいくことになります。

  • 変数とデータ型: 数値や文字列などのデータを格納するための「箱」(変数)と、そのデータの種類(データ型: int, double, String, booleanなど)について学びます。
  • 演算子: 足し算や引き算、比較など、データを操作するための記号(+, -, *, /, ==, >など)の使い方を覚えます。
  • 制御構文: プログラムの流れをコントロールするための構文です。条件によって処理を分岐させるif文、特定の処理を繰り返すfor文やwhile文などがあります。
  • メソッド: 一連の処理を一つの単位としてまとめ、名前を付けたものです。コードの再利用性を高め、プログラムを構造化します。
  • オブジェクト指向プログラミング(OOP): Javaの核となる考え方です。クラス、オブジェクト、継承、ポリモーフィズムといった概念を学ぶことで、大規模でメンテナンス性の高いアプリケーションを設計する力を身につけることができます。

まとめ

この記事では、Javaプログラミングの世界への扉を開けるための、長く、しかし不可欠な旅を共にしてきました。私たちは、Javaがなぜ強力なのかを支えるJVM、JRE、JDKの役割から始め、あなたのコンピュータに最適な開発環境を構築しました。そして、コマンドラインという基本に立ち返り、自らの手でソースコードを書き、それをコンパイルし、実行するという、プログラムが生まれる瞬間を体験しました。さらに、初心者が直面するであろう壁を乗り越えるためのトラブルシューティングの知識も身につけました。

「Hello, World!」は、プログラミング言語との最初の対話です。あなたは今、Javaという言語と対話するための基本的な文法を学び終えました。これから先には、変数、制御フロー、オブジェクト指向といった、より豊かで表現力のある対話の方法が待っています。IDEやビルドツールといった強力な道具も、あなたの学習と開発を力強くサポートしてくれるでしょう。

プログラミングの学習は、一朝一夕に成るものではありません。小さな成功を積み重ね、エラーから学び、そして何よりも作ることを楽しむ姿勢が大切です。今日手に入れたこの foundational knowledge(基礎知識)は、あなたが今後どのような複雑なアプリケーションを構築しようとも、決して揺らぐことのない強固な土台となります。Javaの世界へようこそ。あなたの創造的な旅が、今、ここから始まります。


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