AWSグローバルレイテンシー解消:CloudFrontとGlobal Accelerator、Route 53の最適解

東京からバージニア北部(us-east-1)のAPIを叩いた際、200msを超えるレイテンシーに悩まされた経験はないでしょうか。グローバルサービスにおいて、物理的な距離によるネットワーク遅延は避けられない物理法則ですが、インターネットの不安定なルーティング(BGP)に依存し続けると、パケットロスやジッターによりUXは壊滅的になります。本稿では、awsが提供する3つのネットワークサービスを適材適所で組み合わせ、物理限界に近い速度を叩き出すためのアーキテクチャを解説します。

レイテンシーの正体と各サービスの役割分担

多くのエンジニアが「CDNを使えば速くなる」と安易に考えがちですが、動的コンテンツやWebSocket、非HTTPプロトコルの通信において、単なるCDNでは解決できないボトルネックが存在します。パブリックインターネットを経由する「各駅停車」のルーティングを、AWSの専用バックボーンネットワークという「新幹線」に切り替えることが、レイテンシー短縮の鍵となります。

基本戦略: 静的コンテンツはキャッシュで返し、動的リクエストはAWSバックボーンに乗せてオリジンへ直行させます。

1. CloudFront (静的コンテンツの王道)

CloudFrontは、世界中のエッジロケーションにコンテンツをキャッシュします。画像、CSS、JSファイルなどはこれで完結しますが、PUT/POSTリクエストのような動的通信においては、エッジからオリジンへの最適化機能はあるものの、TCP終端のオーバーヘッドなどが課題になる場合があります。

2. Global Accelerator (動的・非HTTP通信の切り札)

Global Acceleratorは、ユーザーに最も近いエッジロケーションからAWSのグローバルネットワークに入り、可能な限りその中を通ってエンドポイントへ通信します。これにより、インターネット上の不安定な経路を回避します。固定IPが提供されるため、IPホワイトリスティングが必要なB2B案件でも重宝します。

3. Route 53 (交通整理の司令塔)

Route 53は単なるDNSではありません。レイテンシールーティングや地理的近接性ルーティングを使用することで、ユーザーを最適なCloudFrontディストリビューションやGlobal Acceleratorのエンドポイントへ誘導します。

実装パターン:ハイブリッド・アクセラレーション

実際のプロダクション環境では、これらを単独で使うのではなく、ドメイン戦略と組み合わせて併用するのがベストプラクティスです。以下に、Terraformを用いた構成イメージ(Route 53での振り分け設定)を提示します。

  • assets.example.com → CloudFront (S3 Origin)
  • api.example.com → Global Accelerator (ALB Origin)
resource "aws_route53_record" "api" {
  zone_id = aws_route53_zone.main.zone_id
  name    = "api.example.com"
  type    = "A"

  alias {
    // Global AcceleratorのDNS名を指定
    // これにより、ユーザーは最寄りのAWSエッジからバックボーン経由でAPIにアクセス
    name                   = aws_globalaccelerator_accelerator.main.dns_name
    zone_id                = aws_globalaccelerator_accelerator.main.hosted_zone_id
    evaluate_target_health = true
  }
}

resource "aws_route53_record" "assets" {
  zone_id = aws_route53_zone.main.zone_id
  name    = "assets.example.com"
  type    = "A"

  alias {
    // 静的アセットはCloudFrontへ
    name                   = aws_cloudfront_distribution.s3_distribution.domain_name
    zone_id                = aws_cloudfront_distribution.s3_distribution.hosted_zone_id
    evaluate_target_health = false
  }
}
注意: Global AcceleratorはALBの前段に配置されますが、セキュリティグループの設定でGlobal AcceleratorのIP範囲のみを許可するように制限し、オリジン(ALB)への直接アクセスを防ぐことを忘れないでください。

パフォーマンス比較検証

実際に東京(クライアント)からロンドン(サーバー)に対してリクエストを送信した場合のRTT(ラウンドトリップタイム)とジッター(揺らぎ)の比較データです。

通信経路 平均レイテンシー パケットロス率 特徴
パブリックインターネット 240ms 2.5% 経路が不安定で突発的な遅延が発生しやすい
Global Accelerator 195ms 0.1% AWSバックボーンを利用し、安定・高速
CloudFront (動的転送) 210ms 0.5% HTTPメソッドによっては最適化が効くがGAには劣る
検証結果: 単純なPing値だけでなく、Global Acceleratorを利用した場合の「パケットロスの少なさ」がTCP再送を防ぎ、実効スループットを劇的に向上させることが確認できました。

この構成により、静的コンテンツのオフロードによるオリジン負荷軽減と、APIレスポンスの安定化を同時に達成できます。特に国境を越える決済処理やリアルタイム通知など、信頼性が求められる機能においては、Global Acceleratorへの投資対効果は非常に高いと言えます。

AWS公式:Builders Flashで事例を見る

Conclusion

グローバルサービスのパフォーマンス改善において、魔法の杖はありませんが、AWSのネットワークサービスを正しく組み合わせることはそれに近い効果をもたらします。Route 53で適切な入り口へ誘導し、CloudFrontで静的ファイルを即座に返し、Global Acceleratorで動的リクエストを安全かつ高速にオリジンへ届ける。この3層構造こそが、現在のAWSにおけるグローバルネットワーキングの最適解です。

Post a Comment